差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第5回)

二 差別の要因(続き) 差別は人間特有の美/醜の価値判断と結びついた劣等視の視線に根本要因があるということを見てきましたが、具体的な差別の発生要因は、より複雑です。 命題7:被差別者自身が自らの被差別特徴を劣等視し、自らを差別すること(自己差…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第4回)

二 差別の要因 一で定義づけたような差別は、悲しむべきことに、世界中至るところでほとんど毎日のように生じていると言ってよいでしょう。差別はおよそ人間界につきものの現象なのです。いったいなぜ、人間はかくも差別を好むのでしょうか。差別の要因を探…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第3回)

一 差別とは何か(続き) 前回見た「差別=劣等視」という命題から、第四に、差別とは「視線」に関わるということが導き出せます。 差別とはまず、対象たる人間を「見る」こと、そのうえでその「見た目」から優劣評価をし、劣等者に軽蔑の視線を送ることです…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第2回)

理論編 一 差別とは何か 差別という語は日常になじんでいると思われますが、差別とは何かということについて突き詰めて考えられることは多くありません。 例えば、「太っている人には市民権を与えない」というような政策が提起されれば、ほとんどの人は太っ…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第1回)

全訂版まえがき 本連載は、筆者が10年前に別ブログにて連載した同名の連載を、その後の考察や情勢変化、新情報等を踏まえて全面的に改訂したものです。最も大きな改訂点としては、実践編で扱う各差別事象の並び順を変え、体系的により整理した形にしたこと…

反差別抵抗性について

差別克服の道において最大の障壁となるのは、反差別抵抗性という普遍的に見られる人間の心理及び行動です。 より詳しく言えば、反差別抵抗性とは、差別克服の働きかけに対して抵抗してしまうような心理及びそうした心理に基づく抵抗的行動のことをいいます。…

「高市総理」誕生成らず、しかし・・・

昨日の自由民主党総裁選挙の結果、岸田氏が新総裁に選出されたため、「高市総理」誕生の予測は外れました。頭を丸めるべきかもしれませんが、率直に言って外れて安堵しています。トランプ氏の勝利は所詮外国の事でしたが、今回は自国の事ゆえ、他人事ではな…

心ある自由民主党員さんへの手紙

当ブログでこのような政治的な書簡を公開するのは異例であり、本来のポリシーに反することですが、今回だけの特例として掲載致します。それは、前回記事に関わって、党総裁選挙の投票まで一週間というこの時期に、心ある自由民主党員さん方にお考えいただき…

「高市総理」誕生の可能性

当講座に一つ自慢の種があるとすれば、2016年大統領選挙の党内予備選挙に立候補していたアメリカのトランプ前大統領がまだ泡沫のように思われていた頃、彼の勝利を半ば予見していたことです(拙稿)。同様に、日本における、言わば「女トランプ総理」の…

笑いと差別

先般終了した東京五輪の開幕直前、元お笑い芸人の関係者が20年以上前のコントでユダヤ人ホロコーストを揶揄する表現を用いていたことを理由に電撃解任されるというハプニングがありました。「空前のメダル獲得数」の呼号の前にすっかり忘却されつつあるよ…

五番目の差別か

大会前に四人もの関係者が差別関連絡みで辞任や解任に追い込まれた東京五輪で、今年5月にはセネガル人音楽家(打楽器奏者)ラティール・スィー氏ともう一人のセネガル人音楽家(弦楽器奏者)が、予定されていた開会式への出演を組織委から一方的にキャンセ…

差別、差別、差別、差別

今度は、ユダヤ人差別を理由とする東京五輪大会関係者「解任」である(毎日新聞速報)。大会一日前の総仕上げであろうか、これで、差別関連辞任/解任ドミノ四連発。前回も記したとおり、反差別を謳う五輪憲章(根本原則*)に照らし、これほど差別者を続々…

差別、差別、差別

女性差別、容姿差別に続き、障碍者差別と、東京五輪組織委関係者の差別理由での辞任三連発という異常事態である。2021東京五輪はパンデミック下での強行開催という悪しき前例であるとともに、差別辞任ドミノの点でも恥ずべき前例として後世に記憶される…

黒&白>黄?

※本件については、誤訳によるある種のフレームアップがなされた可能性を指摘する意見もあり(末尾追記参照)、それによれば論旨が変わる可能性もあることから、記事本文をあえて読みづらい小文字表記に改訂しました。 今回は、タイトルの付け方を迷った挙句…

非婚者差別―見えない差別

ちょうど一か月前、札幌地方裁判所が同性同士の婚姻(同性婚)を認めない現行法は法の下の平等を保障する憲法に違反するという前例のない判決を下し、反響を呼びました。この事案が最高裁判所に持ち込まれた場合どうなるのか興味深いところですが、もし最高…

画期的な「容姿差別辞任」

女性差別発言がきっかけで森喜朗会長が辞任に追い込まれた東京オリンピック・パラリンピック組織委員会で、今度は、開閉会式の企画、演出で統括役を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が女性タレント・渡辺直美氏の容姿を侮辱する発言をしたこと…

成人向け反差別教育の地平線

年末以来、成人向けの反差別教育の可能性如何という次なる問題に考えを巡らせていたところへ、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性差別発言を批判され、辞任に追い込まれるという「事件」が起きました。ご本人は「差別的意図はなかっ…

今年を振り返って:2020

本年も残すところあとわずかですが、今年はパンデミックに始まりパンデミックに終わるという異常な年度となってしまうようです。そうした中、差別克服という観点から今年を振り返ってみますと、何と言ってもパンデミックの渦中、国内外で大規模な差別事象が…

第Ⅱ期反差別教育の実践(下)

12歳以降の「形式的操作段階」における第Ⅱ期反差別教育を二つに区分けしたうち、おおむね15歳から18歳くらいまでの第Ⅱ期bにおける反差別教育が今回の主題になります。この年代は思春期の後期に当たる時期で、成人への橋渡しの重要な時期でもあります…

第Ⅱ期反差別教育の実践(上)

第Ⅱ期反差別教育とは、年代的に見て、おおむね12歳以降の「形式的操作段階」の時期に相応した反差別教育に当たりますが、ピアジェ発達段階論による「形式的操作段階」はかなり広範な年代をカバーするので、ここでは、この段階を第Ⅱ期aと第Ⅱ期bとに分けて…

第Ⅰ期反差別教育の実践

前回まで見た早幼児期における反差別原体験は、言わば反差別教育の準備段階のようなもので、この段階ではまだ体系化された教育は実施されません。そうした本格的な反差別教育は、おおむね6歳から7歳くらいの段階で開始されることになります。 エリクソンの…

早幼児期における反差別原体験(下)

差別には、態度によるからかいのような非言語的な形態をとるものもありますが、これはかなり子どもじみたいじめの一種であって、“本格派”の差別ほど言語的な形で表出されます。その第一歩が、辞書にすら多数掲載されているようないわゆる差別語の数々です。 …

「感染自己責任論」と差別

本題の反差別教育論から逸れますが、先月末に非常に興味深くも恐ろしい心理学的な調査結果が出されましたので、それをめぐって論じてみたいことがあります。その調査とは、心理学者の研究グループが、日・米・英・伊・中の5か国で、「COVID-19ウイルスに感染…

早幼児期における反差別原体験(上)

反差別教育は何歳から始めるべきか―。「三つ子の魂百まで」と言われるように、3歳の段階から即行で開始するべきであるということになるのでしょうか。実際のところ、それほど単純ではなさそうです。そもそも、乳幼児は「教育」の対象となり得るかが問題です…

反差別教育の方法論的基礎

前回記事から三か月近く経過しても、いまだ新型コロナウイルス:COVID-19は終息には遠いようです。そうした中で、ウイルス関連での心無い差別行為の実態も耳に入ってきます。どうやら、人類社会ではウイルス自体とともに、それをめぐる差別という言わば心の…

恐怖と差別

今年最初の「講座」となります。本来なら、前年度の考察を踏まえ、教育を通じた反差別の取り組み、すなわち反差別教育の方法論を論じるところでありましたが、折から、新型コロナウイルス:COVID-19の流行に伴い、種々の差別的な行為が見られるようですので…

差別の黄昏:老年期

エリクソンの発達段階理論は、人間が晩年まで生涯にわたって課題を伴いつつ、発達を続けるという非常に広いパースペクティブを持った「発達」の理論に立っていますから、65歳以降人生終盤の老年期にもまだ「発達」の余地があると想定されます。 老年期と言…

差別の中核世代:壮年期

これまでたびたび取り上げてきたエリクソンの発達段階理論において、40歳以降60歳代中ばくらいまでは、「成年期」と呼ばれますが、これはもう少し限定すれば「壮年期」ということでしょう。俗に言う中年期です。エリクソンの発達理論は、人間が生涯にわ…

愛/結婚と差別

前回まで、差別とパーソナリティの関係について見ましたが、ここで、再びエリクソンの発達段階論に立ち戻ってみます。エリクソンによれば、人間の発達段階上、20歳から39歳までを「成人期」とし、ここでは「愛」が最大の発達課題となるといいます。 たし…

差別とパーソナリティ(下)

前回は、差別とパーソナリティの関わりで、気分的な差別主義と結びつきやすい傾向を持つ病的パーソナリティである自己愛性パーソナリティ障害について見ました。これに対して、確信的差別主義と結びつくようなパーソナリティがあるかどうかということが、今…