前回の記述の末尾で、差別的価値観の形成度合いには、確信的なものから、気分的なもの、無意識的なものまで相当な個人差がありますが、そうした個人差はいかにして生じるのかという問いを掲げました。今回はこの問題を考えてみたいと思います。 個人差と聞い…
差別を思考する営為を導く「差別的思考回路」は思春期の頃に形成されるということを前回述べましたが、こうした思考回路だけでは、まだ不充分です。それをベースに、より意識的な差別的価値観というものが形成されて差別的行動様式が完成されます。 そのよう…
ピアジェ発達段階論によれば、12歳以降の「形式的操作段階」に入ると、人は形式的・抽象的思考操作がができるようになるといいます。つまり、これ以降本格的な「思考」と呼べる知的営為が可能となるわけですが、差別学習の観点からみれば、12歳以降はま…
誕生してから乳幼児の間はまだ差別するということを知らない人類が差別行為の第一歩を踏み出すのは何歳頃でしょうか。そうした観点からの本格的な研究自体があまり行なわれていないため断言はできませんが、自身の経験を加味した推定によれば、おおむね7~…
差別行為の基層には、事物を識別するという認知機能があります。事物の識別という認知機能は、人類以外の動物にも備わっているようですが、人類の場合は、識別した事物に価値の優劣を付けるという思考操作が加わります。このような価値序列化は人間の持つ「…
2018年は人が差別的価値観をいつどのようにして体得していくのかという大問題を課題とするという趣旨のことを宣言していながら、実行できませんでした。大きすぎる課題ではありますが、この課題は差別克服の道を考えるうえで、避けて通ることができませ…
近年、「多様性」(diversity)という用語をよく耳にするようになりました。政府や自治体の政策上にもこのような用語が散見されます。その意味するところは文脈により多少異なりますが、最大公約数的には、人の採用や人事構成に際して、特定のカテゴリーに属…
TBSの報道によると、アメリカで100年近い伝統を持つミスコン「ミス・アメリカ」が、水着審査を廃止すると発表したそうです。水着審査に代えて、リーダーシップや知性など、より内面の美しさを重視するとのこと。理由として、ハリウッドから広がった反セク…
アメリカで数々の差別的言動を繰り返す「差別王」トランプ大統領が誕生して以来、レイシスト(racist)という単語がクローズアップされています。この語は日本では「人種差別主義者」が定訳とされています。 たしかにracistの語源であるraceは「人種」ですか…
先日、アメリカのCNNが興味深くもショックな研究結果について報道した。それはインターネットを通じて、米国人(と思われるが、報道では明示されず)950人に、対象として選ばれた黒人男性と白人男性の体重や身長、力強さ、体格を評価してもらうという…
就任して一月もたたないうちに差別的な入禁政策を断行して混乱と抗議を招いているトランプ大統領であるが、批判の中によく見られるフレーズ「アメリカ的でない」には、やや疑問を覚える。歴史的に見ればむしろ、こうした差別的入禁政策は「アメリカ的」とも…
まだいくらか日を残す今年は、差別克服の視点から注目すべき様々な出来事が起きた一年だった。最大級は7月の障碍者施設襲撃大量殺戮事件であるが、これについては事件後の記事である程度管見を述べてあるので、ここでは、諸事情からすぐにレスポンスできな…
差別王トランプが、ついに公民権法半世紀余りの歴史ある国の大統領になってしまった。世界の差別主義者たちは、欣喜雀躍していることだろう。かかる絶望的事態は、当ブログでは昨年12月の拙稿で予測し、こう述べていた。 無視されず、反響があることに気を…
7月の障碍者施設襲撃事件は障碍者やその家族に大きな衝撃というより恐怖を与えたようである。事件以来、外出に恐怖を感じたり、障碍児を連れていると人目が気になる、また同種施設ではセキュリティ強化、防犯訓練などの対応に追われるといった影響が出てい…
障碍者施設襲撃事件からひと月。この間、五輪一色報道という恒例の悪習慣がはさまったため、事件に関する報道はすっかり消え、早くも忘れられようとしている。だが、事件が社会に、さらにはひとりひとりに突きつけた問いは不変である。その問いとは、人間の…
昨年末、予告しておきながら保留していた出生前診断をめぐる問題について、改めて論及してみたい。前回これを取り上げたのは、ある県の教育委員が県の予算や家族の負担を理由に、出生前診断を奨励すべきかのような発言をしたことに衝撃を受けてのことであっ…
26日、相模原市で発生した知的障碍者施設襲撃事件は、死者数では戦後最悪の大量殺人事件と指摘されているが、問題は数ではない。障碍者だけを狙った殺戮という質の点でも、(おそらくは)世界史上初の最悪事件ではないだろうか。 報道によれば、犯人は「障…
最高裁が同性婚を憲法上の権利と認めたアメリカの一部州で、結婚以外では同性愛者を差別することを合法化する対抗的差別法のような法律を制定する動きが出てきている。例えば、ミシシッピ州では州内事業者がLGBTへのサービス提供を拒否することが合法化され…
熊本・大分地震では、まさに今月施行されたばかりの障碍者差別解消法がいきなり災害時の障碍者対応という難題に直面したことは不運とも言えるが、実際のところ、新法は災害対応の現場で生かされたとは言えなかったようだ。 例えば、4月26日の時事通信は、…
今月より「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、障碍差別解消法という)が施行された。当法律は2013年に公布済みであったが、三年間の周知期間を置いての施行という触れ込みである。 この法律は、その名称どおり、障碍を理由とする差…
マイクロソフト社が開発した人口知能Tayがネット上で人種差別やヒトラー礼賛を学習し、発言するようになったため、運用休止に追い込まれたのは、差別克服の観点からは背筋が寒くなる「事件」であった。 この一件が明らかにしたのは、差別思想というものが…
以前、「トランプ発話を逐一報じることはかえって彼への注目と支持を強めることになる」と当ブログ記事で警告していたことが、現実のものとなりつつある。少なくとも、彼が米共和党の「大統領候補」に指名される可能性は高くなっている。 これに対し、米有力…
ドイツで長年事実上の禁書とされていたヒトラーの自伝的教条書『我が闘争』が8日、再版された。きっかけは昨年までバイエルン州が公的に管理してきた著作権が切れたためという。しかしこれは戦後ドイツにとっては大きな転換となるため、波紋を呼んでいるよ…
昨年は、内外で公職者・有識者等による差別発言が続いた。また民間においても、近年台頭してきたヘイトスピーチに代表されるような差別助長行為・運動が引き続き見られた。残念ながら、この傾向が今年激変するという根拠はない。 こうした動向に対して、反差…
アメリカ次期大統領選の共和党候補者指名選に立候補している「不動産王」ドナルド・トランプが「イスラーム教徒の米国入国禁止」を打ち出したことが波紋を呼び、英国では対抗上、トランプの英国入国を禁止する署名運動が展開され、議会が検討を始める事態と…
「知の巨人」とも称される評論家の立花隆がNHKの報道番組中で「めくら」という言葉を使ったことについて、番組キャスターが「おわび」コメントをした経緯をめぐり、「言葉狩りだ」という立花擁護論が起きている。 番組というのは、本年度ノーベル物理学賞…
先月、神奈川県海老名市議会議員がツイッターに「同性愛者は生物の根底を変える異常動物だ」と書き込み、問題となった。幸いにして、この発言は強い批判を浴び、市議会は今月3日には議員辞職勧告決議を採択する事態となった。 批判の根拠は「差別」というこ…
先月、茨城県の教育施策を話し合う会議の席上で、一人の県教育委員が障碍児らの通う特別支援学校を視察した経験をもとに、「妊娠初期にもっと(障碍の有無が)わかるようにできないか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」、「…
日本語のカタカナ外来語の氾濫には閉口するが、反差別の分野でもカタカタ外来語は多い。例えば、従来から「バリアフリー」という語が定着してきたと思ったら、これはもう時代遅れで、最近は「ユニバーサルデザイン」と言うらしい。 ユニバーサルデザインとは…
報道(SAPIO→NEWSポストセブン)によると、韓国では容貌差別(広くは容姿差別)が深刻な社会問題だという。以下、記事を引用してみよう。 現代韓国社会最大の差別は“容貌差別”・・・だ。容貌で就職や結婚をはじめ人生の行方が決まる。だから最近は男性も就職…