差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

「内面美」のミスコン?

TBSの報道によると、アメリカで100年近い伝統を持つミスコン「ミス・アメリカ」が、水着審査を廃止すると発表したそうです。水着審査に代えて、リーダーシップや知性など、より内面の美しさを重視するとのこと。理由として、ハリウッドから広がった反セクハラ運動「#Me Too」の影響もあると説明されています。
当ブログでは、容姿差別こそ差別の一丁目一番地という考えを提唱してきました。とすれば、外面的な容姿によって女性に優劣をつけるミスコンなどは、さしづめ「容姿差別大会」と言えそうです。ミスコン主催者も、そうした外面美偏重審査の差別性に気づき、内面美重視へと審査基準を変更しようとしているようです。
内面美への着目は、差別克服の重要な実践となり得るものであることはたしかです。ですが、内面美は外から見ることはできません。その人と接する中で、その言動に自ずと表れてくるものです。「ミス・アメリカ」の新基準では、「リーダーシップや知性など」を見るそうですが、リーダーシップが強く、知性が高いことが内面美を保証するわけではありません。
内面美を審査して優劣をつけることなどできないのです。そもそも内面というものは、コンテストには適さないと言って過言でないと思います。反セクハラ運動「#Me Too」に触発されたというなら、女性の美だけを競い合うミスコン自体を廃止するのが最も明快です。
水着審査を廃止したところで、ミスコン審査から容姿の基準が完全に排除されるとは思えませんし、若い未婚女性限定という応募条件も変わらないでしょう。結局、審査基準の標榜的な変更は、反セクハラ運動「#Me Too」にかこつけて、何とかミスコン自体は護持しようという主催者の戦略なのでしょう。
もっとも、女性美だけを問題にするのが差別というなら、男性美を競い合うバチェラー・コンテストも同時開催してはどうかという提案もあり得るでしょう。実際、英語圏ではミスコン(ミスコンテスト)とは言わず、「ビューティー・パジェント」(直訳すると、美の祭典)と言うので、男性部門を設けることは可能です。
しかし、それは一見「両性平等」に見えても、解決策にはなりません。問題は、容姿を基準に優劣をつけるという所為そのものにあるからです。もし、純粋に内面美だけで審査するというなら、それは審査不能なコンテストということになり、そもそもイベントとして成り立たず、廃止へ向かう運命にあります。
ここでは詳しく言及しませんが、世界に広がる「#Me Too」運動は、単なるセクハラ撲滅運動ではなく、性の革命とも言える時代のうねりです。それは、容姿で人を差別するという人間の習性全般を廃することを目指す静かな革命なのです。そのプロセスは、ミスコンのような容姿差別大会の廃止も導くはずです。