差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

2015-01-01から1年間の記事一覧

トランプ差別発話への対処法

アメリカ次期大統領選の共和党候補者指名選に立候補している「不動産王」ドナルド・トランプが「イスラーム教徒の米国入国禁止」を打ち出したことが波紋を呼び、英国では対抗上、トランプの英国入国を禁止する署名運動が展開され、議会が検討を始める事態と…

立花隆の「めくら」発話をめぐって

「知の巨人」とも称される評論家の立花隆がNHKの報道番組中で「めくら」という言葉を使ったことについて、番組キャスターが「おわび」コメントをした経緯をめぐり、「言葉狩りだ」という立花擁護論が起きている。 番組というのは、本年度ノーベル物理学賞…

「同性愛者=異常動物」言説

先月、神奈川県海老名市議会議員がツイッターに「同性愛者は生物の根底を変える異常動物だ」と書き込み、問題となった。幸いにして、この発言は強い批判を浴び、市議会は今月3日には議員辞職勧告決議を採択する事態となった。 批判の根拠は「差別」というこ…

出生前診断をめぐって(上)

先月、茨城県の教育施策を話し合う会議の席上で、一人の県教育委員が障碍児らの通う特別支援学校を視察した経験をもとに、「妊娠初期にもっと(障碍の有無が)わかるようにできないか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」、「…

「ユニバーサル」の落とし穴

日本語のカタカナ外来語の氾濫には閉口するが、反差別の分野でもカタカタ外来語は多い。例えば、従来から「バリアフリー」という語が定着してきたと思ったら、これはもう時代遅れで、最近は「ユニバーサルデザイン」と言うらしい。 ユニバーサルデザインとは…

容姿差別―他人事か

報道(SAPIO→NEWSポストセブン)によると、韓国では容貌差別(広くは容姿差別)が深刻な社会問題だという。以下、記事を引用してみよう。 現代韓国社会最大の差別は“容貌差別”・・・だ。容貌で就職や結婚をはじめ人生の行方が決まる。だから最近は男性も就職…

遺伝差別について(下)

遺伝子検査では、表面からは見て取れない個人の多種類の膨大な情報が取得できるため、そうした個人の内的情報を利用した種々の差別が科学的な根拠付けを伴って行なわれる危険があるのであった。そうだとすると、そのような危険な遺伝子検査自体を差別とみな…

男女共用トイレ考

アメリカはサンフランシスコのある小学校で、全トイレを男女共用に改修する方針を決めたという。理由は、性的少数者児童への配慮。つまり、トランスセクシュアル(以下、TS)の児童は男女別トイレではどちらのトイレにも心理的抵抗を感じるのを解消するた…

遺伝差別について(上)

ゲノム解析技術の進歩により、遺伝子検査が普及し、日本でも商業的な検査サービスが宣伝されるようになった。一般的な検診嫌いの筆者も郵送で簡単にできる遺伝子検査に惹かれて試してみたが、簡易検査であるにもかかわらず、様々な病気の確率因子や先祖のル…

身長差別をめぐって

先日、あるテレビ番組で自国のセールスポイントを問われた一人のアフリカ人がゴリラの生息地が存在することを指摘した後、ピグミー族の存在を付け加えたことがひっかかった。ゴリラは周知のとおり類人猿だが、ピグミー族は人類である。ただ、民族遺伝的に低…

ハラスメントは差別か

ハラスメントという外来語が定着し、TVドラマのタイトルにもなる時勢である。この言葉は、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、エイジ・ハラスメント等々、ハラスメントの要因となる事由を組み合わせて使われるので、いくらでも拡大してい…

大統領のnigger発言

これまで、差別に関する一般論的な概説をしてきたが、実際のところ、差別は日常の中で発生するので、何が差別に当たるのか、判断に迷うことも多い。そうしたこれって差別?という疑問をそのつど解決していくことも、差別克服の重要なプロセスである。今回以…

動物差別について

以前、差別最終街区の四丁目二番地・犯罪者差別の隣は動物差別であると述べた。実際、凶悪犯罪者は「鬼畜」と評されることすらあることからも、このことは裏付けられる。動物差別とは、人間以外の動物を劣等視することである。 人間はかねて高等知能を有する…

日本社会と差別(下)

「日本社会と差別」の最終回である。差別は世界中すべての国で何かしら発現している現象であるが、差別にも「国柄」が滲み出る。そこで今回は、普遍的な人類的現象である差別が日本社会ではどのような特徴をもって発現しているかについて考える。 日本社会で…

日本社会と差別(中)

前回は、日本社会において差別克服が困難な課題となる理由として、差別が高度の社会的安定の秘訣として利用されていることを、特に移民制限と精神障碍者隔離という典型的な二つの事例を挙げつつ、指摘した。しかし、日本社会で差別克服が困難となる理由は、…

日本社会と差別(上)

差別問題を街区にたとえて、一丁目から四丁目まで見て一巡したところで、今回から日本社会における差別問題の特殊性について、考えていきたい。残念ながら、日本は差別に対して感度の低い国であり、包括的な反差別法の制定もめどが立たない状況である。差別…

知能差別の克服

前回から差別の三丁目に立ち入っているが、ちょうどよく、政治家による差別発言のニュースが飛び込んできた。与党の幹事長某が街頭演説の中で、「バカだ、チョンだ」という発言をしたという。 ただ、この発言で専ら問題にされているのは、かつて朝鮮人への蔑…

差別の共犯関係

性別による差別、中でもその中心にある女性差別については国際的にも克服の取り組みが重ねられてきたこともあり、差別解消が最も進んでいる分野であるが、それでもその進展のレベルには国ごとに相当な格差がある。その違いはどこから生じてくるのだろうか。 …

ナチスとイケメン

今年はアウシュヴィッツ解放70周年の節目ということで、内外で改めてナチスへの関心が高まっている。そこで、本講座でも、差別の一丁目に関するまとめを兼ねて、このテーマを取りあげてみることにするが、それにしても奇妙過ぎるタイトルになった。 なぜ、…

サルにも容姿基準!

[前注] 本記事は元来、「白紙の倫理」について述べたものでしたが、改めて『〈反差別〉練習帳[全訂版]』に収めたため、改題したうえ、元記事では追記として付加した部分のみを残して、本文は削除しました。 今日、この記事を書いていて、驚くべき―という…

全盲の倫理

年末以来、約一か月ぶりの発信である。目下、当初の予想を超えたレベルの黙殺を受けている状況であるが、めげることなく、差別を克服するための方策を考えるという企画を続けていきたい。 以前、人間は五感の中でも視覚が比較的発達しているうえに、美醜とい…