差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

外見判断の危険性

先日、アメリカのCNNが興味深くもショックな研究結果について報道した。それはインターネットを通じて、米国人(と思われるが、報道では明示されず)950人に、対象として選ばれた黒人男性と白人男性の体重や身長、力強さ、体格を評価してもらうという米心理学会による調査。

それによると、実際は対象の黒人男性も白人男性も同じ大きさだったにもかかわらず、回答者は黒人を白人よりも、大きく強いと判断したという。また黒人男性に対しては口論に際して警察による実力行使もやむ得ないとの見方が強かったこともわかった。 

注目すべきは、黒人の回答者も白人の回答者も黒人男性の大きさや力を過大評価したという点である。ただし黒人の回答者は、黒人男性をより危険だとみなしたり、口論の最中に警察が実力を行使することが当然だとは回答しなかった。

黒人男性を危険とみなすこうした先入観は、肌の色が濃かったり、厚い唇といった「黒人らしい」顔の特徴が強いほど、強まったという。つまり、純粋系のアフリカ黒人男性ほど大きく、危険であるという先入観が強まるということである。そうした偏見の根源には、アフリカ黒人を奴隷たるべき動物的な存在とみなしてきた白人による人種差別的蔑視があるわけであろう。
 
日本人のような非白人のアジア人にもこのように肌色で相手方の危険性を判断する傾向があるのかどうかという点も興味あるところであるが、今回の研究では論及されていないようである。黒人自身が黒人男性の大きさや力を過大評価しがちという研究結果から推すと、同様の結果がアジア人においても見られるかもしれない。

これをもう一歩一般化すれば、人間はいかにぱっと見た相手方の印象に左右されやすいかということ、さらに煎じ詰めれば、人間は視覚的表象に依存しやすく、それこそがあらゆる差別の根源に横たわっているということになる。このことは当ブログでも経験則的に幾度となく指摘してきたが、改めて心理学的にも裏付けられた形である。

上記研究では、犯罪被害にも直結するような相手の危険性という判断に肌色が大きく影響することを示しているが、このような先入見判断による危険性は、まさに相手の外見で人間の危険性を判断することで、かえって思わぬ犯罪被害に遭う危険性である。