差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

「トランプ大統領候補」の現実味

以前、「トランプ発話を逐一報じることはかえって彼への注目と支持を強めることになる」と当ブログ記事で警告していたことが、現実のものとなりつつある。少なくとも、彼が米共和党の「大統領候補」に指名される可能性は高くなっている。
これに対し、米有力紙ワシントン・ポストが警鐘を鳴らし、共和党指導者にトランプ阻止を呼びかける異例の社説を掲載した。しかし、それも虚しく、共和党他候補や上院議員などの有力者にも支持表明が広がろうとしている。
このようなあからさまな反トランプ社説は、アンチを売りにしている彼にとってはマイナスなどころか、かえって「主流派」から叩かれることでいっそう支持を集める危険を孕んでいる。また同社説がトランプの不法移民1000万人強制送還という提案に対して、スターリンポル・ポトを引き合いに出すのも視点がずれている。
アメリカの不法移民の多くはメキシコ国境から密入国したメキシコ人を中心としたいわゆるヒスパニック系と考えられるので、それをまとめて強制送還するという策は、スターリンポル・ポト的な政治犯強制収容政策とは異なり、人種差別的な意図を秘めた排斥・追放政策の性格を持つ。
その点では、先にトランプが提起して国際的な波紋を呼んだ「ムスリム入国禁止政策」―ムスリムの多くはアラブ人を中心としたアジア人・アフリカ人―と対を成す将来の「トランプ政権」の差別的排斥政策の一環であろう。
もし歴史の中に類似するものを見出そうとするなら、スターリンポル・ポト以上にヒトラーである。「トランプ政権」が現実のものとなり、これまでの公約を修正せず文字どおりに実現するなら、それは単なる超保守政権では済まず、アメリカ史上初めての“ナチ政権”となる可能性がある。
そういう悪夢を現実化しないためにも、前記事で提起したように、メディアは「トランプ批判」より「トランプ黙殺」を実行すべきなのである。だが、日本のメディアも含め、トランプを興味本位的に追いかけ、その動静を連日大々的に報じている。
これを見ると、メディアも心のどこかでトランプ発話にシンクロしていて、「ミセス・クリントン政権」よりもはるかにインパクトの大きな「トランプ政権」の成立を深層心理的に望んでいるのではないか、とさえ思えてくるのだ。
もしそうでないと言うなら、今ならまだ遅くはない、見せかけの「公平性」などかなぐり捨てて、メディアはあえてトランプ以外の候補者の動静だけを伝える「偏向」報道に転じること、それが「アメリカ・ナチ政権」の現前を阻止する唯一の方策である。