差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

反差別抵抗性について

差別克服の道において最大の障壁となるのは、反差別抵抗性という普遍的に見られる人間の心理及び行動です。

より詳しく言えば、反差別抵抗性とは、差別克服の働きかけに対して抵抗してしまうような心理及びそうした心理に基づく抵抗的行動のことをいいます。漠然と語るより、まずは具体的に挙げた方がわかりやすいと思われますので、整理のため、いくつかの類型に分けながら説明します。


Ⅰ 反撃型
 差別克服の働きかけに対して、開き直ってしまうこと、俗に言えば「逆ギレ」のことです。抵抗が高じれば、嫌がらせや暴力、テロ行為に発展することさえあります。

Ⅱ 黙殺型
 差別克服の働きかけに対して、無視放置することです。行動のうえでは反撃型と対照的ながら、開き直りという本質は同じです。

Ⅲ 反論型
 差別克服の働きかけに対して、理屈で反論することです。反撃型や黙殺型に比べれば理性的な形態をとった抵抗と言えますが、その理屈の立て方にも、素朴なものから、理論武装しているものまで、レベル差があります。以下、代表的な例を挙げます。

言葉狩り:ある単語あるいは表現が差別的だと指摘された場合に、しばしば持ち出される素朴な反論。日本ではよく見られます。

〇時効:特定の人の相当に過去の差別的言動歴が問題とされた場合に、しばしば持ち出されるやや素朴な反論。

〇反・反差別理論:反差別の議論に対し、政治理論的に持ち出される反論。政治論争好きのアメリカでは隆盛です。その代表例として次の二つがあります。
 
 ◇政治的正しさの理論:一般に差別語や差別的表現の回避は「政治的な正しさ」を求める「左翼/リベラル的」理論だとする反論。言葉狩り批判は、この「理論」の日本化された素朴な変形とも言えます。         
 
 ◇批判的人種理論:人種差別に関して、反人種差別の言説は「白人優越主義が社会形成の根幹を成す法律や制度を通じて現代アメリカ社会になお組み込まれている」と主張する「左翼」の理論に基づくとする反論。特に学校教育にこのような「理論」が持ち込まれているとして、学校での反人種差別教育を排除する運動が展開されています。


Ⅳ 回避型

 差別克服の働きかけに対して、自分は差別などしないし、差別されることもないという思い込みから、避けてしまうことです。Ⅱの黙殺型と似ていますが、黙殺型のように開き直るのでなく、そもそも関心がないという点が異なります。


差別抵抗性には以上の四類型がありますが、ⅠとⅡは明らかに自身に差別加害の自覚があっての反差別抵抗性です。Ⅲは自身に差別加害の自覚がありながらも、それを「理論」にくるんで正当化しようとする心理に支えられています。Ⅳは自身に差別加害の自覚がない点で異例的ですが、実はこの類型が最も一般的に見られる反差別抵抗性なのです。

反差別抵抗性への対処という観点から見れば、ⅠからⅣに進むにつれ、対処が困難になります。意外なことに、反撃型はその見かけの激しさにもかかわらず、対処は難しくなく、回避型が最も困難なのです。というのも、自分は差別と無関係と思い込んでいる人に関心を持ってもらうことは難しいからです。