差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

〈反差別〉練習帳

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第28回)

レッスン4:性差別(続き) 例題7: [a] 国会や地方議会の議員定数の半数を必ず女性とするという制度が提案されたとして、あなたは支持しますか。 (1)支持する(2)支持しない [b] 企業・団体・官庁等の基幹職(企業・団体の場合、役員を含む)…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第27回)

レッスン4:性別差別(続き) 例題4:あなたは「男らしさ」という価値を肯定しますか。 (1)肯定する(2)肯定しない(3)わからない 近年は「男らしくない男」が増えた?せいでしょうか、「男らしさ」という言葉も以前ほど聞かれなくなった感もありま…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第26回)

レッスン4:性別差別 レッスン4では、差別の二丁目一番地に当たる性別に基づく差別に関する練習をします。 例題1:あなたは女性の「母性」の存在を信じますか。 (1)信じる(2)信じない(3)わからない 性差別の中でも歴史的に最大級であり続けてき…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第25回)

レッスン3:人種/民族差別 〔まとめと補足〕 人種/民族差別は、歴史上人種隔離・民族虐殺のような最も深刻な反人道的事態を世界各地で引き起こしてきたため、差別問題の主犯格で代名詞のような位置にあります。それにしても、人種・民族という概念は極め…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第24回)

レッスン3:人種/民族差別(続き) 例題3: あなたが企業の採用担当者だとして、民族的に日本人でなく、外見も明らかに日本人とは異なるが、日本国籍を持つ人が面接に来ました。日本語は完璧で、履歴や人物も申し分ありません。採用しますか。 (1)採用…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第23回)

レッスン3:人種/民族差別 レッスン3では、差別の一丁目最後の三番地に当たる人種/民族差別に関わる練習をします。 例題1: [a] あなたの子が(子がいない場合は、いると仮定して)、結婚したい相手として外国籍のアフリカ人(黒人)を連れてきたと…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第22回)

レッスン2:障碍者/病者差別 〔まとめと補足〕 障碍は広い意味で病気の一類型または一症状ですが、病者のうち不治の障碍を持つ人々を通常「障碍者」としてくくり出しているようです。 障碍の中でも身体障碍は外見にそれとわかる特徴が出るため、容姿差別の…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第21回)

レッスン2:障碍者/病者(続き) 例題5: [a]あなたが結婚を前提に交際している相手から、ある遺伝病を持っていることを打ち明けられたとして、あなたならどうしますか。 (1)別れる(2)交際を続ける [b]([a]で「別れる」と回答した人への質問…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第20回)

レッスン2:障碍者/病者差別(続き) 例題3: 寝たきりで完全介護が必要な障碍者を見ると、かわいそうだと思いますか。 (1)思う(2)思わない 具体的な状況での対処に関する練習であった前回の例題とは異なり、今回はより一般的な問題について考えて…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第19回)

レッスン2:障碍者/病者差別 レッスン2では、差別の一丁目二番地に当たる障碍者/病者差別に関する練習をします。 例題1: 介助者なしの車椅子に乗った障碍者が道の段差を乗り越えられず難渋しているのを見かけたとして、あなたならどうしますか。 (1…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第18回)

レッスン1:容姿差別 〔まとめと補足〕 理論編でも述べたとおり、容姿差別はあらゆる差別の出発点に位置するがゆえに、実践編でも最初のレッスンのテーマとなりました。近年は、容姿差別(lookism、discrimination by appearance)への問題意識が少しずつ高…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第17回)

レッスン1:容姿差別(続き) 例題5:[a] 自分の容貌に劣等感を抱く親友から悩みを打ち明けられたとして、あなたならどう対応しますか。 (1)美容整形をすすめる(2)容貌に自信を持つように励ます [b] あなた自身が容貌のゆえに差別されていると…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第16回)

レッスン1:容姿差別(続き) 例題3:あなたが道を歩いていた時、向こうから身長140センチ未満と思われる成人(性別は問わない)が歩いてきて、すれ違った。あなたならどうしますか。 (1)視線をそらす(2)視線を当てる(3)あざ笑う(4)つばを…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第14回)

実践編 ━はじめに━ 実践編では、これまで理論編で検討してきたことをもとに、具体的な例題を用いながら〈反差別〉の練習を試みていきます。ここからが「練習帳」としての当連載の本題となります。 理論編ではそもそも差別とは何かということや、差別をいかに…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第13回)

八 差別克服の実践練習(続き) 差別克服の実践練習の本番は、後に本練習帳の各論で差別の個別的な分野ごとに練習問題を通じて展開されますが、ここでは、それに先立って、より準備運動的な差別克服のトレーニング方法について見ていきます。 差別の準備運動…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第12回)

八 差別克服の実践練習 前章で示したような差別克服のための視座は社会啓発を通じて一般市民に浸透させていく必要があるのですが、それだけでは全く不足です。なぜなら、それらはいずれも人間としてのあり方そのものに関わる視座であるがゆえに、年少の頃か…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第11回)

七 差別克服のための視座 〈差別のない社会〉は、例外なくすべての人にとっての理想でしょう。いや、自分は確信的な差別主義者であるから、〈差別のない社会〉よりも〈差別のある社会〉を理想と考えるという人もひょっとしておられるかもしれません。しかし…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第10回)

六 差別救済のあり方 前回、近代的な国民国家は差別の培養器となってきたのと同時に、国際条約に背中を押されつつ、当の国民国家によって差別を克服する努力もなされていることを指摘しました。本章では、そうした国民国家による差別克服努力の中でも、被差…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第9回)

五 国民国家と差別 前回、様々な差別行為の類型をまとめる中で、私人による差別と公権力による差別の区別について指摘しました。 前近代までの差別は、ほとんどが民間で私人によって形成されてきた慣習的なもので、公権力が関わるとすれば、そうした民間の慣…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第8回)

四 差別に関する行為類型 これまでの三つの章では、一般的な現象としての差別について概観してきましたが、差別の具体的な発現の仕方は様々であり、露骨な差別からそれとない暗示による差別まで、変幻自在と言えます。 また、私たち私人が私的に差別する伝統…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第7回)

三 差別と言葉(続き) 命題11に関連して、差別語と区別すべきものとして、反面差別語と並び、前差別語というものがあります。 命題14: どのような文脈で用いても直接に差別語となることはないが、言外に差別的なニュアンスを含む前差別語の使用も差別…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第6回)

三 差別と言葉 差別が劣等視の視線の言葉化・言説化からスタートするとすれば、差別における言葉という要素は決定的です。 おそらく世界中すべての言語の中に差別を言葉化した差別語のリストがあるでしょう。それらの差別語は公式には使うべきでない禁句とな…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第5回)

二 差別の要因(続き) 差別は人間特有の美/醜の価値判断と結びついた劣等視の視線に根本要因があるということを見てきましたが、具体的な差別の発生要因は、より複雑です。 命題7:被差別者自身が自らの被差別特徴を劣等視し、自らを差別すること(自己差…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第4回)

二 差別の要因 一で定義づけたような差別は、悲しむべきことに、世界中至るところでほとんど毎日のように生じていると言ってよいでしょう。差別はおよそ人間界につきものの現象なのです。いったいなぜ、人間はかくも差別を好むのでしょうか。差別の要因を探…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第3回)

一 差別とは何か(続き) 前回見た「差別=劣等視」という命題から、第四に、差別とは「視線」に関わるということが導き出せます。 差別とはまず、対象たる人間を「見る」こと、そのうえでその「見た目」から優劣評価をし、劣等者に軽蔑の視線を送ることです…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第2回)

理論編 一 差別とは何か 差別という語は日常になじんでいると思われますが、差別とは何かということについて突き詰めて考えられることは多くありません。 例えば、「太っている人には市民権を与えない」というような政策が提起されれば、ほとんどの人は太っ…

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第1回)

全訂版まえがき 本連載は、筆者が10年前に別ブログにて連載した同名の連載を、その後の考察や情勢変化、新情報等を踏まえて全面的に改訂したものです。最も大きな改訂点としては、実践編で扱う各差別事象の並び順を変え、体系的により整理した形にしたこと…