差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第14回)

実践編

━はじめに━
 
 実践編では、これまで理論編で検討してきたことをもとに、具体的な例題を用いながら〈反差別〉の練習を試みていきます。ここからが「練習帳」としての当連載の本題となります。
 
 理論編ではそもそも差別とは何かということや、差別をいかにして克服するかといったことを概論的に検討しましたが、それだけでは差別を克服することはできません。差別を真に克服するためには、私ども一人ひとりが日常的な場面で差別的状況に直面したときにどう対応したらよいかということに関する一定の練習を積む必要があるからです。

 
 そこで、実践編では、私たちが身近に経験しそうなシチュエーションを設定した具体的な例題を主要な素材としながら、〈反差別〉の練習をします。
 この練習は、全部で11項目に番外編1項目を加えた12項目のレッスンから成り立っています。最後の番外編を除けば、各レッスンは現代社会で生起しやすい代表的な差別事象で構成されますが、筆者はこれを町の街区になぞらえて、次のように分類しています。


〇一丁目::外見による差別

*一番地:容姿差別
*二番地:障碍者(/病者)差別
*三番地:人種(/民族)差別


〇二丁目::性による差別

*一番地:性別差別
*二番地:性自認差別
*三番地:性的指向差別


〇三丁目::能力による差別

*一番地:知能差別
*二番地:職業差別
*三番地:年齢差別


〇四丁目::余所者への差別

*一番地:国籍差別(外国人/移民差別)
*二番地:犯歴差別(犯罪者差別)


〇番外地::動物に対する差別


 各「番地」ごとに心理テストのようないくつかの例題が示されますが、そうした例題の多くは、具体的な場面で自身がどう対応するか、考えるかというアンケート方式になっているので、さしあたりは感覚的な判断で回答していただければ結構です。
 結果として、差別的な回答を選択してしまったとしても恥じる必要はありません。なぜなら、差別的偏見は、筆者を含め、誰もが一つや二つは必ず心の奥底に抱いているものだからです。全編の「はじめに」でも述べたように、大切なことは、そうした差別を恥じたり、糾弾したりする前に、まず差別を「差別」と意識したうえで克服する心の習慣を身につけることなのです。
 
 ちなみに、各レッスンの並び順は基本的に差別という事象の根本的な要因である視覚的表象(いわゆる見た目)に基づく差別の典型的な例から順に並べたもので、必ずしも差別事象としての発生頻度とかトピックとしての重要度による順位付けではありません。
 しかし、差別事象としての根の深さの度合いは、その差別がどの程度まで視覚的表象に依存しているかということに比例するので、初めのほうのレッスンほど抜き差しならぬ根深い差別事象に関わっていると言ってよいでしょう。そうした意味で、レッスンの順番は絶対的なものではありませんが、「深刻度」の強い順に並べられていると言えます。