差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

身長差別をめぐって

先日、あるテレビ番組で自国のセールスポイントを問われた一人のアフリカ人がゴリラの生息地が存在することを指摘した後、ピグミー族の存在を付け加えたことがひっかかった。

ゴリラは周知のとおり類人猿だが、ピグミー族は人類である。ただ、民族遺伝的に低身長であることを特徴とするため、動物視、怪物視されるなどして、現地でも歴史的に差別・迫害されてきた。

件のアフリカ人がゴリラとピグミーを並べたことに両者を同一視する意図があったのかどうかは不明で、偶然ということもあり得るが、完全に聞き流す扱いをした番組の編集とともに、もやもやとした後味が残った。

それはともかく、ピグミー差別をより一般化すれば、低身長差別の範疇に入る。ピグミー(pygmy)という語自体、元来ギリシャ語で「拳骨」、転じて「小人」を意味するようになった単語を語源としており、いわゆるピグミー族とは本来、ムブティ、アカ、バカその他の正式部族名を持つ現地の少数民族の総称である。

低身長差別はおそらく世界中に遍在するので、ピグミー差別はそれが人種差別の亜種である民族差別と組み合わさって発現したものと見てよい。根底にある低身長差別は当講座で提示した街区になぞらえる差別類型によれば、一丁目一番地の容姿差別に含まれる。身長も、容貌と並び、容姿の良否の評価ポイントだからである。

ただし、低身長にも民族的または家系的な遺伝による正常範囲の低身長とホルモン異常等の病気による低身長とがあり、後者の病的低身長に対する差別は、容姿差別と障碍者差別を兼ねた複合差別と言える。

さらに細かく言えば、容姿差別の中でも、容貌差別と身長差別は別個であり、例えば容貌の点では一般に美男美女と認知されるであろう人が低身長であれば、「残念」な身体的欠陥として劣等視されるということが大いにあり得るのである。

また性差との関連では、どちらかと言えば、女性の低身長よりも男性の低身長のほうが劣等視されやすく、女性では逆に高身長が差別されやすい傾向にある。これは、平均的に男性のほうが女性よりも高身長であるという人類における生物学的な性的二型に応じているとともに、夫婦の場合は、「妻は夫より高身長であるべきでない」という女性蔑視的偏見も混ざった差別における性差と考えられる。

こうした身長にまつわる差別も、容貌差別と同様、容易なことでは消失しないだろう。その克服法は、以前容姿差別に関して述べた「全盲の倫理」や「白紙の倫理」の復習である。すなわち、他者を評価するに際して、低身長というような外見を見えないものとして、あるいは一切白紙状態にしてみることである。