差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

ハラスメントは差別か

ハラスメントという外来語が定着し、TVドラマのタイトルにもなる時勢である。この言葉は、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、エイジ・ハラスメント等々、ハラスメントの要因となる事由を組み合わせて使われるので、いくらでも拡大していき、「××ハラ」の増殖にうんざりという人もいるだろう。
ハラスメントの種類を数えてみた人によると、30種類はあるという。ハラスメントはもとより英語のharassmentに由来する外来語だが、これは和語では「嫌がらせ」とも訳される。「嫌がらせ」とは、相手が嫌がる言動をあえてしかけることをいうが、嫌がらせが一種の不法行為であることは間違いない。
嫌がらせをする人はなぜそうするのかという動機は、様々であろう。上司によるパワー・ハラスメントなどは、部下の仕事ぶりに苛立ってとか、部下を厳しく鍛え直すためといった必ずしも悪意と言い切れない動機の場合もあり得るところである。
本講座で考えてみたいのは、ハラスメントと差別の関係である。ハラスメント=差別でないことは、上記の例から明らかである。ハラスメントが差別となるのは、差別的な意図からハラスメントが行なわれた場合に限られる。集合記号で書き表せば、差別 ⊅ ハラスメントとなる。
そうした差別的な意図からのハラスメントが最も多いのが、セクシュアル・ハラスメントである。これは多くの場合、男性が女性に対してしかけるもので、女性差別の一形態である。その場合、加害行為者の男性は女性を自分に奉仕すべき存在、あるいは自分より軽い存在と見下している。
また、性別を問わず容姿の特徴から特定の人に嫌がらせをしかけるような場合、差別としては容姿差別の範疇だが、現象としてはこれも性的魅力をめぐるハラスメントと理解するなら、セクハラの一種とも言える。
次いで、エイジ・ハラスメントは年齢差別的な意図から行なわれる場合が多いが、若輩者への対抗心や嫉妬心から嫌がらせをしかけるような場合は、差別ではなく、ある種のいじめの範疇に含まれる。
一方、パワー・ハラスメントの場合、差別に該当する場合は比較的少ないが、下級者に対する軽蔑が主要な動機となっている場合は、広い意味での職業(種)差別とみなせる場合があろう。
ハラスメントは動機・事由のいかんにかかわらず、人格権を侵害する不法行為であるが、中でも差別行為としてのハラスメントは最も深刻である。その意味で、差別的なハラスメントは単なるハラスメントではなく、はっきりと「差別」と指称したほうが実態を反映すると思われる。