差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

〈反差別〉練習帳(連載補遺2)

レッスン番外編:動物差別(続き)

 

例題2:
あなたは動物に嫌悪感を持っていますか。


(1)持っている
(2)一部の動物には持っている
(3)持っていない

 

 動物への嫌悪感は前回見た人間至上主義と完全に同じではなく、より感覚的なものではありますが、これも動物差別の要因となり得ます。その点では、人間の同性指向者への嫌悪感と似た面もあります。

 

 ただ、動物嫌悪の中には、医学的なアレルギー反応(例えば猫アレルギー)から来る動物嫌悪や、心理的パニック障害としての動物恐怖症といった本人に責任のない病的な反応もあり、これらの動物嫌悪は差別とは無関係です。これらはある種の病気ですから、医学的な治療の対象となります。

 

 それに対して、病的ではない単なる嫌悪感は、何に由来するのでしょうか。これにも定説はまだありませんが、一つには人間至上主義の感覚的な表れということが想定できます。人間を生物界の至高の存在として優越的に認識していると、動物に対する劣等視が嫌悪感として表出されるということが考えられるのです。
 これは人種差別や性差別における種々の優越主義的思考の中でも、劣等視する対象の人種なり性的少数者なりを嫌悪するという形で表出されることと似ています。

 

 ところで、この例題では、選択肢(2)を選ぶ人も少なくないと思われます。例えば、動物全般を嫌悪するわけでないが、ヘビやトカゲあるいはゴキブリなどなど一部の動物は嫌悪するという具合です。
 これは動物の中にある種の優劣関係を認めて、その一部を嫌悪するというもので、次の例題3につながる選択的嫌悪感の問題となります。

 

例題3:
(例題2で「(1)持っている」以外を選択した人への質問)次の動物のグループを好感を持てる順に並べてください。同程度の好感度の場合は、五十音順で結構です。


鳥類・爬虫類・哺乳類・昆虫類

 

 これは動物全般に嫌悪感を持っていないことを前提に、動物のグループごとに好感度に優劣を認めるかどうかを問う例題です。
 ちなみに、各グループに含まれる具体的な動物についておおよそのイメージはお持ちかと思いますが、爬虫類にはヘビやトカゲの類の他、カメも含まれます。また育児を母乳で行う哺乳類には人間(ヒト)も含まれますが、本例題では当然ながら人間は除外されます。

 
 本例題は完全な自由回答ゆえ、どんな順番でも構いませんが、すべてのグループについて好感度に差はないという完全な「動物平等主義者」はほぼいないのではないかと予想します。
 さらに、哺乳類を一番に上げる回答が多く、爬虫類が最後になるのではないでしょうか。犬や猫に代表される哺乳類の好感度が一番なのは、同じ哺乳類としての親近感ばかりでなく、「可愛い」といった感覚的な好意もあるでしょう。
 一方で、爬虫類が嫌悪されるのは、その外見の不気味さが大いに影響しているはずです。ですから、同じ爬虫類にあっても、ヘビは最も嫌悪されますが、カメを嫌悪する人は少ないのです。

 
 また、昆虫類はその種類が極めて多いので(およそ100万種といいます)、蝶やカブトムシのように愛でられる種から、ハエのように追い払われる種、さらにはゴキブリのように発見次第殺害される種まで、人間の好感度もまさに千差万別です。

 
 このように、動物のグループの中で、さらには各グループの内部で優劣関係をつけるのも、動物差別の一形態です。これは厳密には動物の種に基づく差別なので、「動物種差別」と呼ぶのが正確でしょう。
 このような動物種差別においても、人間の容姿差別や人種差別と同様に、「見た目」が決定的な優劣基準となっています。そのため、動物種差別とは容姿差別・人種差別の動物版だと言えます。ここでも、全盲の人はヘビのような動物の特徴的な外見を視覚でとらえられないので、有視覚者ほどヘビを嫌悪しないかもしれません。

 
 ここで告白しますと、筆者もヘビは苦手です。しかし、近年は、ヘビを愛し、飼育する女性たちもいるそうです。ヘビと言えば特に女性から最も嫌悪される動物の代表格と考えられてきましたが、これにも変化が見られるようです。
 この変化は、動物を見た目で判断しない潮流の表れとして、ポジティブにとらえることができます。それが、人間の差別克服の一助となることが期待されます。