差別克服講座

様々な個人的または集団的属性を理由とする差別を克服するための日常的な努力の方法について考えるブログ

〈反差別〉練習帳[全訂版](連載第34回)

レッスン6:性的指向差別(続き)

例題3:
[a] あなたは「同性間の結婚を認めるべきだ」との提案を支持しますか。

 

(1)支持する
(2)支持しない

 

[b] 「同性婚は認めないが、同性カップルにも既婚者に準じた法的地位(例えば相続や財産共有)を保障する制度を創設すべきだ」との提案についてはどうですか。

 

(1)支持する
(2)支持しない
(3)わからない

 

[c] ([a][b]ともに「支持しない」とする人への質問)その理由は何ですか(自由回答)。

 
 同性指向者のカミングアウトが困難である現状、同性指向者が同じ立場の伴侶を見つけること自体容易でないはずですが、首尾よく見つかったとしても、現在の日本の民法上、婚姻は異性間のみに限定されているため、二人が結婚することはできません。
 
 このように同性婚を法的に認めない政策が直ちに差別に当たるかと言えば、必ずしもそうとは言い切れません。というのも、本来、婚姻とは単に伴侶同士の共同生計を法的に保障することにとどまらず、子どもを産み育てるという次世代の再生産を促進する社会的な制度としての性格も帯びているために、生殖作用のあり得ない同性間の結婚は想定外のこととされてきたからです。このことは同性指向者を劣等視しているというよりも、婚姻という制度の本旨に由来する除外とも言えます。
 

 とはいえ、[a]の提案のように、婚姻を同性間にも開放することは、一つの画期的な包容政策として近年の先進的な家族政策となってきました。実際、同性婚を認める国(国内の州を含む)も西欧を中心に増加しており、こうした問題ではおしなべて保守的なアジアでも台湾では法制化されています。
 
 ただ、婚姻制度の中に同性指向者を併合的に取り込むことが真の包容と言えるのか、という問題もあります。婚姻においては夫と妻という役割関係を払拭し切れないところ、同性指向者間に夫と妻という役割規定は通常存在しませんから、その関係を婚姻に当てはめることはできないのではないかという考え方もあり得るからです。むしろ同性指向者は古典的な婚姻制度を打破していく社会的な原動力たるべきではないか━。
 
 そう考えるとしますと、[b]の提案のように、通常の婚姻とは別立てで、同性指向者向けに婚姻に準じた制度を用意するほうが妥当のようにも見えます。言わば同性指向者専用の特別婚姻制度(以下、同性間パートナーシップ)です。
 実は、このような制度のほうが同性婚よりも先行して世界的に普及していたのですが、それはおそらく同性間パートナーシップならば、同性婚に否定的な人たちでも辛うじて賛同可能なため、早期実現の見通しが立ちやすいからということもあったのでしょう。
 
 しかし、このように異性指向者⇒婚姻、同性指向者⇒同性間パートナーシップという振り分けをすることは、まるで人種隔離政策のように、同性指向者を婚姻とは別枠の制度内に“隔離”するに等しく、あの「分離すれども平等」の詭弁と同じだという批判もあり得るところです。
 
 このように見てきますと、本例題の[a]と[b]いずれも「支持しない」とする見解も、それだけで差別的と断じることはできないでしょう。
 いずれも「支持しない」とする見解が差別性を帯びるのは、[a]と[b]いずれの提案もそれを認めれば背徳的な同性愛を容認することになるからという明白に反同性指向的な理由づけによる場合ということになります。